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2014年4月18日金曜日

はなぼん

花井裕一郎
文屋、2013年

 図書館は一種のサービス業である。そのサービス業に「もてなす」という精神を重要視したのが「まちとしょテラソ」であると感じた。著者は「もてなす」ことを、「『以って為す』。自分の持てる物や発想、能力のすべてを駆使して、目の前にいる大切な人を喜ばせるために、またその人がより輝き、幸せになるために、全力を尽くし、自らは黒子に徹すること」であると捉えている。
 「仏作って魂を入れず」ではないが、図書館の善し悪しを決めるのも。詰まるところそうした基本的なことなのかもしれない。どんなに立派な建物で大量の蔵書を抱えていても、図書館員の対応が悪ければ図書館自体の印象も悪くなってしまう。また反対に一部に「無料貸本屋」との批判のある公共図書館でももてなしの精神があれば、本を貸すだけではなく、行けば元気になるというような「体験」も提供できるのであろう。
 しかし、著者の肩書が「元館長」となっていたので気になったことがある。そうした精神的なものが継続的に提供できるのか、という問題だ。もちろん、小布施は年間120万人の来訪者が訪れる町であり、それは葛飾北斎を魅了したように江戸時代からもてなす文化が町民に根付いてはいるのだろう。だが、図書館を一公共施設として捉えた場合、一定のサービスの水準が求められる。組織として運営する以上、ある程度はシステム化せざるを得ない部分があろう。館長が代わっても、もてなす図書館は健在なのか。現場に足を運び、現場で呼吸をして確かめてみたい。

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