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2014年6月22日日曜日

これまでの読書の振り返り

本を読むと心が豊かになるか。
ならないと思う。

私は結構本を読んできたが、心は豊かではないと思う。
それは、読む本にも原因があるのかもしれない。
そこで、これまでの読書を振り返ってみることにする。

私の最も古い記憶は幼稚園くらいまでしかない。
三島由紀夫は産湯に浸かって頃を記憶していたというが、本当だろうか。


【幼稚園】
「昔話」の絵本を読んでもらっていた。
幼稚園の図書室で「おしいれのぼうけん」を借りた記憶がある。他にも「ぐりとぐら」とかを読んでいた気もするが、記憶がない。

【小学校】
低学年(←この言葉の響きが懐かしい)は、「エルマーの冒険」は流行っていたので読んでいた。ワニが出てきてたのを覚えている。展覧会で紙粘土でそのワニを作成した。歯のところが難しかった。
中学年(←こんな言い方があったっけ? 中学と紛らわしい)では、コロコロコミック(月刊の漫画雑誌)を買いだした。ミニ四駆情報を得ていた。
「(タイトル忘れた)」野球少年だった私は野球の本を好んで読んでいた。当時はそのモデルが誰なのか知らなかったが、高田繁(元巨人軍V戦士、横浜ベイスターズGM)の少年時代の話が記憶に残っている。二年連続で読書感想文を書いたら、二年目に何かに掲載された。
教科書に載っていた「モチモチの木」は、学校の課題で一日一回以上読むことになっていて、母親の前で読んでチェックをもらっていた。そのためか、丸暗記をした。この頃が、記憶力のピークだったのかもしれない。
そして、何と言っても「ズッコケ三人組シリーズ」である。中身は全く覚えていないが、よく読んでいた、また寝る前に父親に読んでもらっていた記憶がある。
また、なぜか山下清の伝記についても寝る前に父親に読んでもらっていたが、父親がなぜか飛ばしながら読むので、全く頭に入ってこなかった。そのことを指摘すると、私が寝ていたせいにされた。あれは父親が読みながら寝ていたから、飛ばし飛ばし読んでしまったものと解釈している。
高学年では、イチローの関連本ばかり読んでいた。

【中学校】
読書感想文でダウンタウンの浜田の「読め!」を扱ったら、教師に苦い顔をされた。当時はバス釣りが流行っていたので、今江克隆プロの本をバイブルのようにして毎日読んでいた。また、サッカーワールドカップで日本が初めて出場した。中田英寿の「中田語録」は中3の時にカバンの中に入れて持ち歩いていた。

【高校】
中学時代の国語の便覧がこの頃のバイブルになっていた(なお、大学に入学するまでバイブルとなっていた)。
学歴を初めて気にしたのもこの便覧のせいである。
文学史に名を刻む作家たちはほぼ東大か早稲田だった(本当はそれ以外にもいるが、当時はそう思い込んでいた)。
東大は無理そうだったので、とりあえず早稲田を目指そうと思った。
谷崎潤一郎が運動オンチということを知ったのも便覧だった。
そこで、文学青年になろうと急に思い立ち高一の夏休みに徹夜で太宰治の「人間失格」を読んだが、眠くなって後半は字面を追うだけになってしまった。とはいえ、ゆめうつつで読んだため、変に夢の中と行き来してしまい、しばらく誤った「人間失格」像をもってしまうことになる。なぜか、ファイナルファンタジーⅥと麻薬で精神病院入れられる人という記憶になっている。
高2から河合塾に通ったが、古典の先生の授業が面白く、日本の古典に興味をもった。とりあえず「あさきゆめみし」(源氏物語の漫画)を読んだ。古典の授業は土曜日にあり、授業後は毎回立川のオリオン書房に行くのが恒例になった。毎回4時間位滞在し、5千円くらい本を買っていた。村上龍を読みだし、ハマっていた。基本的には中学の便覧に載っていた作家の本を買っていた。
爆笑問題のラジオを聴くようになり、太田光が進めていた本は大体買った。亀井勝一郎「青春について」が太田光の青春時代のバイブルだと知り、探したが見つからなかった(絶版だった)。
司馬遼太郎は寝る前に読むと、すぐに寝ていた。本の厚さのわりに字が大きかったり、改行ばっかりのため意外と読み進めることができた。竜馬がゆく全8巻を読み終えたことで、本を読むことに対して自信がついた。
気づけば本ばかり読んでいて、受験勉強はしなくなっていた。そして、午前中の授業ないらしいぞという理由で受けた早稲田の社学を受験し、落ちた。

【浪人時代】
筑摩文庫から出ている夏目漱石の全集を読むことに決めた。
日本史は司馬遼太郎を読むことで、勉強に代えることとした。
明治大学の教授齋藤孝が「読書力」という本で、とりあえず文庫50冊、新書100冊読みなさいとのことだったたので、従うことにした。
また、齋藤孝の影響で3色ボールペンで線を引きながら、本を読み出した。齋藤メソッドによれば、赤は一番重要なところ、青は次に重要なところ、緑は主観的に面白いと思ったところに線を引く。よくわからなければとりあえず線を引きなさいとのことだったたので、ほぼ線を引きまくった。ただし、それは前半だけで、後半は線を引くことを忘れ、まっさら状況になっていた。私は覚えが悪かった。
結果として、合計200冊くらい読んでいた。この頃は、「ドストエフスキー」をド「フ」トエフスキーだと思い込んでいたが、「罪と罰」の新潮文庫版を読んでいたら、急に目が悪くなった。そこからメガネになった。
なお、この時期に映画を300本くらい観た。

【大学時代】
演劇学専攻だったので、この時期に初めて戯曲を読んだ。
最初のテキストは「オイディプス王」だった。シェイクスピアでは最後の作品と言われている「テンペスト」を読んだ。
ゲーテ「若きウェルテルの悩み」、セルバンデス「ドンキホーテ」、サリンジャー「フラニーとゾーイ」など、海外の文学にハマる。
「いやあ、私は英米文学を専攻していまして、いつもヘミングウェイ、ヘミングウェイって言ってるんですよ」と初対面の時に言われ面食らったが、その鬱陶しい奴がやがて親友になった。
文学を語れる仲間もでき、とりあえず、村上春樹ってダメだよね、みたいなことを言っていればそれなりですみたいな状況にいた。

【就職浪人時代】
なぜか東野圭吾にハマりほぼ読破する。犯人を教えてくれない作品があって、今だに私はわからないままだ。
勝間和代を一応押さえておいた。

【社会人】
猪瀬直樹氏に怒られたことがきっかけで、猪瀬直樹作品にハマる。
「唱歌の誕生」以外はほぼ全て読んでいる(これから読もうと思った時に氏は知事を辞任した)。
代表作「ミカドの肖像」は電子書籍バージョンでも読んだことが印象深い。
そして、生まれて初めて参加した読書会での作品も「ミカドの肖像」だ。
「小論文の書き方」という新書があるが、ほぼ中身が「小論文の書き方」ではないことに驚いたこともいい思い出だ。

最近は気づけば新書ばかり読んでいる。古典は全く読んでいない。一度、20世紀最大の名作と言われる「失われた時を求めて」を読破しようとしたが、全13巻のうち1巻だけしか読まず、結局うまいことまとまっている新書を読んで、分かった気になっておこうということをしてしまった。

2014年6月1日日曜日

論点思考

内田和成
東洋経済新報社、2010年

 BCGと聞けば条件反射で「ハンコ注射」を思い出し、続いて「ツベルクリン反応」の単語を連想してしまう私はビジネスマンとしては失格であろう。そのようなビジネス音痴な私の対極に位置するのが、BCGの日本代表、そしてシニアアドバイザーを歴任した内田氏である。ご承知のとおり、BCGはボストン・コンサルティング ・グループの略称であり、世界的に有名なコンサルティング会社である。本著は内田氏の豊富なビジネス経験から培われた思考法が紹介されている。

 ビジネス音痴の私であるが、BCGがコンサルティング会社であることは知っていた。それは、例えば自己啓発本の分野では著名な岩瀬大輔氏の出身会社であるからだ。また、これまた自己啓発本の分野では著名な勝間和代氏がコンサルティング会社として有名なマッキンゼー出身であることも知っている。学歴と同じように、これらのコンサルティング会社出身であることが、有能であることの社会的なステータスになりえているのは何となく伝わってくる。例えば、前述の岩瀬氏は開成出身、東大出身、司法試験合格、ハーバードビジネススクール出身と並べてBCG出身として認知されている。絵に書いたようなエリート経歴の者が選ぶ就職先、それがコンサルティング会社なのである。

 さて、著者の内田氏自身が述べているように本著は「問題発見に力点を置いた本」(P233)である。また、本著のタイトルでもある「論点思考」とは、「『自分が解くべき問題』を定義するプロセス」(P31)である。なぜ、問題を定義することが大切なのか。それは学校での試験とは違って、「ビジネスの世界では誰も『あなたが解くべき問題はこれである』と教えてくれない。上司がいても、本当に正しい問題を与えてくれるかどうかもたしかではない」(P31)からである。正しく問題を定義した上で問題を解決しなければビジネスでは成果を上げることはできないのである。また、もちろん、これはビジネスの世界だけにはとどまらない。例として挙げられているのは元ニューヨーク市長のジュリアーニ氏の行政分野での取組である。ジュリアーニ氏はニューヨークの治安回復に大きな成果を上げた人物である。ジュリアーニ氏は次のように「論点思考」を行った。「いきなり凶悪犯罪を減らすことはできないし、それより小さな犯罪を徹底的に取り締まったほうが簡単だし、結果として街が安全になる。」建物の窓が壊れているのを放置したままにするとそれが関心の低さのサインとなり、犯罪を誘発するという割れ窓理論に基づき、ジュリアーニ氏は軽微な犯罪も見逃さずに取り締まった。結果として、在任期間中、ニューヨーク市の殺人事件は3分の2に減り、全体の犯罪件数も約半分になったという。

  本著はビジネスに限らず、行政分野でも十分応用可能な思考法を教えてくれる。俗な言葉でいえば、「仕事のやり方」ということになろうが、どんな世界でもやはり一流の人間の方法は真似したくなるものである。そうした意味でも仕事について改めて問い直しを行い、これまでの自分の仕事の仕方について反省をする良い機会となった。